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2020年02月16日

読書録「コンダクター」ほか

読書録「コンダクター」3

著者 神永学
出版 角川文庫

p407より引用
“ 芸能人などはいい例だ。麻薬密売に始ま
り、恐喝や窃盗と罪を犯した人間が、数年後
に素知らぬ顔でテレビに出ているなんてこと
は当たり前だ。
 つい先日も、覚醒剤で逮捕されたミュージ
シャンが、復帰のコンサートを終えたばかり
だ。”

 音楽家たちの周囲で起こった事件とそこか
ら始まる出来事を描いた、長編ミステリ小説。
同社刊行作加筆・修正文庫版。
 いつから見始めたかもわからない悪夢につ
いて、カウンセリングを受けるフルート奏者・
朽木奈緒美。心理カウンセラーの診察を受け
るが、夢の登場人物を思い出すことは出来ず…。

 上記の引用は、登場人物の一人を詐欺にか
けた人物について書かれた部分の一節。
2020年2月15日時点だと、非常にタイムリーな
話なので、思わず苦笑いしてしまいました。
国によっては即死刑となるらしい違法薬物犯
罪ですが、日本は随分とゆるいようです。せ
めて再犯者には、人の目につかないところに
いてほしいものです。
 著者の作品らしく、スピード感がありなが
ら、複雑な人間の感情と絡み合いが味わえま
す。しかし、出てくる人間の多くが糞みたい
なやつで、読んでいて少々気分が悪く感じま
す。しっかりとした解決はなされるのですが、
読後感はすっきりとしたものではなく思われ
ました。ドロドロした人間関係が好きな方向
け。

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読書録「腕貫探偵」3

著者 西澤保彦
出版 実業之日本社文庫

p129より引用
“寿憲が〈かや〉へ通いつめてきたのは、そ
こが他者の心情を慮ることなくお互い思う存
分馴れ合って生きてもいいんだという刹那的
な錯覚を提供してくれる場所だからである。


目次より抜粋引用
“腕貫探偵登場
 恋よりほかに死するものなし
 化かし合い、愛し合い
 喪失の扉
 すべてひとりで死ぬ女”

 神出鬼没の役所の相談窓口とそこにいる事
務員の記号のような男に持ち掛けらえる出来
事を描く、短編連作ミステリ小説。
同社刊行作文庫版。
 昨夜の出来事の対応で、疲れ切っていた大
学生・蘇甲純也。事務手続きのため大学の事
務室を訪れた彼の目に、一枚の張り紙が映り
込んだ…。

 上記の引用は、なじみの飲み屋で失敗した
男についての一文。
外にありながら、少しでも気を許せる場所と
いうのは、あるとありがたいものなのでしょ
うね。こういう場所が、歩いて行ける距離に
ある生活に、少し憧れを持ちます。
 名前もない、役所の相談窓口の男が、一応
の主人公なのでしょう。すべての話を通して
出てくるのは、舞台となる架空の都市とこの
男だけです。しかし、本文中でこの男が出る
場面の方が少なく、事件の相談を持ち込んだ
人たちがそれぞれの話の中で、男のアドバイ
スに従って対応していきます。解説では狂言
回しと表現されています。
 登場人物の苗字など、名前の付け方が特徴
的。解説によると、この著者の持ち味のよう
ですが、希少な苗字の人ばかりで、最初に振
られた読み仮名を忘れると読めなくて、途中
から頭の中でアイツ・コイツと変換している
自分がいました。

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posted by 出雲一寸 at 08:43| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする