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2012年03月23日

20120323口伝150イングリモングリイトスギ

20120323口伝150イングリモングリイトスギ

この文章はフィクションです

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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝150」

イングリモングリイトスギ

 日本の広島県で開発された園芸用植物糸杉の一品種である。
樹高は最大3m程度であまり大きくなりすぎず、
生垣などに具合がよく人気の品種である。

 糸杉と言えば大体まっすぐに育ち高く細い樹形が持ち味だが、
この品種はその特性を真っ向から否定するような形質である。
なぜかはわからないけれど幹が左右に曲がりながら育ち、
くねくねと蛇行するのである。
名前のイングリモングリとは広島の言葉でくねくねの意、
流通する商品名としてはイングリモングリシスギで売られている。

 この植物を開発した育種業者は、
はじめは糸杉の葉の色のバリエーションを増やそうと、
新品種開発に取り組んでいたのだそうである。
 そこで突然変異で表れたのがこの品種、
苗木一年目からその細い幹をくねくね蛇行させており、
殺菌などに使った農薬で薬害が出たのかと思われたそうである。
その時の育成担当者が普通の人なら、
さっさと引きぬいて廃棄されていたのだろうけれど、
洒落のわかる人物だったのが幸いした。
 一本だけだったこのくねくねした苗を育て、
挿し木でどんどん増やして商品にまでしてしまったのである。

 初めて園芸店の店先に並べられたときは衝撃だったそうだ。
細くてまっすぐな糸杉の苗のコーナーに、
一区画だけ変な木が纏まっておいてあるのだから、
目立たないはずがなくあっというまに売り切れたそうである。
 こうしてその奇妙さ故に園芸情報誌などにも度々取り上げられ、
苗の生産が追いつかなくなる程だったそうだ。

 こうして生垣によく利用されるようになると、
ある問題が浮上してきたのである。
左右にくねくねと曲がりながら育つその幹の形をよく見るために、
葉を手入れするときはどうしてもうちわ状にならざるを得ない。
その為必然的に風に弱くなってしまうのである。
 根冠は放射状に広がっているので抜けてしまうことは稀だが、
風の進行方向と直角にぶつかってしまうと根元から折れる。
近くを歩いていると木製の壁が倒れてくるようで、
非常に危険である。
 この様な事態に陥らないためにも、
最近は販売時に植え付ける場所の、
風のとおり具合を注意するようにされたりの対策が取られている。
また栽培上の注意としては、
倒れた時に周りも物を破壊しない高さに剪定する様に、
苗木に注意書きが添えられるそうである。

 偶然とはいえ人気の品種を作り出すことに成功したこの会社、
次は風に強い変わった品種を創りだそうとしているそうである。
次の目標は螺旋状に幹が伸びる糸杉を育種するとのこと、
ドリルは男のロマンといったところであろうか、
楽しみである。

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この文章はフィクションです
posted by 出雲一寸 at 20:56| フィクション、創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする